竹内敏喜 蛇足から  
蛇足から 4 (二〇二三年一月二九日)

     
ふらりと立ち寄り
一〇〇円ショップに並ぶ商品を見渡して
ここは平等だ
と、
感じる人はいるだろうか

テレビの画面が映し出す鶏舎
一羽ずつ仕切りで分けられ
日々、卵をうむ数十万羽のメスに
食と住がそろい、外敵から隔離された理想的な生活だ
と、
思う人はいるのだろうか

法治国家の夢はそうした場所で安らいでいる
もしも目覚めれば、ニュースとなった見通しが解きほぐされよう
…統治者には飴でできた鞭が応分に配られ
庶民は、鞭でできた飴を
均一に受け取っては(ウイルスを削減したつもりの)個室へと急ぐ
(そう、鞭は無知、飴はアーメン)
祈りによる洗脳から、洗脳後のお祈りへ

一〇代の脳内で暴走する最新の配信曲だってそうだ
かつては楽器こそ
人が歌うみたいに魂で奏でられて、はじめて喝采を浴びたが
楽器が難曲を弾きこなすように
声で符を(磔のオタマジャクシを)正確にとらえられることが
ステータスになった
たいていの聞き手の感情も圧倒されたふりをするだろう
歌心は、赤ン坊のまま眠っているというのに

(起きた方がいい、急いで起立した方がいい)

下校だ帰ろう
カエルさゲコー
月光に孵り
ゲコーで変えよう
帰るは下向
下戸のカエル
結婚だ買えよ
栄えれば結構
ゲコーで帰ろう



竹内敏喜(たけうちとしき)
詩人。1972年京都生まれ。詩集に『翰』(彼方社、1997年)、『風を終える』(同、1999年)、『鏡と舞』(詩学社、2001年)、『燦燦』(水仁舎、2004年)、『十六夜のように』(ミッドナイト・プレス、2005年)、『ジャクリーヌの演奏を聴きながら』(水仁舎、2006年)、『任閑録』(同、2008年)、『SCRIPT』(同、2013年)、『灰の巨神』(同、2014年)​​​​​​​。『魔のとき』(同、2022年)
 
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