竹内敏喜 蛇足から
蛇足から 19 (二〇二三年一一月二一日)
時とともに遂行する楽しみ
いや不幸にも、推敲に楽しさを見出すこと
…この先を読む者に□いあれ
大きなカゴを背負い
裏山へ山菜採りに入れば
あれよあれよと正午も過ぎるが
道なき道を奥に進むほど
秋の深まりが目に沁みてきて
怖ろしいくらいに華麗な一枚の
落ち葉をひろって眺めている
負いたる者の身に、草
喉のかわきに気づき
斜面へ腰をおろし杯に酌む
静かなこの場でまぶたを閉じれば
ややあって木の実の落ちる音
静けさをつまみにグッと飲むと
ややあって小鳥の飛びたつ声
天の妬みのこだまのように
お、至るもの、飲みにくさ
ほろ酔いにかゆみが足の指を舞い
これはいかんと腰を上げるが
くらりと踏み場がなくなったのか
落ち葉の坂へとすべり落ちる
カゴの中身はばらまかれ
集めてみても半分ほど
いずれここにも芽が出てこようぞ
笈足るも、野蚤、憎さ
するする夜は間近となり
空は見事な夕日を映す
足元はもう見えない
ここはどこだろう
だが帰ろうとする理由はわからず
酒もあるし火を焚き山の幸でも食おう
他のことは明日に考えればいい
追い樽も、野の身に、句さ
読む者に□いあれと二心
…この先を読む者に□いあれ
大きなカゴを背負い
裏山へ山菜採りに入れば
あれよあれよと正午も過ぎるが
道なき道を奥に進むほど
秋の深まりが目に沁みてきて
怖ろしいくらいに華麗な一枚の
落ち葉をひろって眺めている
負いたる者の身に、草
喉のかわきに気づき
斜面へ腰をおろし杯に酌む
静かなこの場でまぶたを閉じれば
ややあって木の実の落ちる音
静けさをつまみにグッと飲むと
ややあって小鳥の飛びたつ声
天の妬みのこだまのように
お、至るもの、飲みにくさ
ほろ酔いにかゆみが足の指を舞い
これはいかんと腰を上げるが
くらりと踏み場がなくなったのか
落ち葉の坂へとすべり落ちる
カゴの中身はばらまかれ
集めてみても半分ほど
いずれここにも芽が出てこようぞ
笈足るも、野蚤、憎さ
するする夜は間近となり
空は見事な夕日を映す
足元はもう見えない
ここはどこだろう
だが帰ろうとする理由はわからず
酒もあるし火を焚き山の幸でも食おう
他のことは明日に考えればいい
追い樽も、野の身に、句さ
読む者に□いあれと二心
竹内敏喜(たけうちとしき)
詩人。1972年京都生まれ。詩集に『翰』(彼方社、1997年)、『風を終える』(同、1999年)、『鏡と舞』(詩学社、2001年)、『燦燦』(水仁舎、2004年)、『十六夜のように』(ミッドナイト・プレス、2005年)、『ジャクリーヌの演奏を聴きながら』(水仁舎、2006年)、『任閑録』(同、2008年)、『SCRIPT』(同、2013年)、『灰の巨神』(同、2014年)。『魔のとき』(同、2022年)