竹内敏喜 蛇足から  
蛇足から 14 (二〇二三年八月七日)

     
青い光り、白くにごり
にごりが白ければ白いほど
まだらに光りは濃くなっていく

月のない夜、川のような空
かたちもなく、終わりもなくて
ここもどこも同じに見える

やがて星が祈るから、空が明るく見えてきて
その大きさそのものを眺めていると
小さいものを思い出し

赤色だったり、緑だったり
てのひらの上の黄色だったり
そうしたものの、ふいの悲しみ

大きさ、小ささ
違うようで、似ているものが
ひとつひとつ心をめぐる

めぐりのなかで赤色が落ち
緑や黄色が海に落ち
それらは黒のようになる

けれども黒には違う光りもあるのか
安らぎで満たしてくれる
明るさと暗さとが、まるで同じとなって

見上げれば空は、音で染まり
流れるように聞こえたり
スタッカートでちぎれたり

次々と来る音たちは、にごりとぶつかり合って
伸びていき、尖っていき
切り裂いたむこう、輝きが増し

それは明日のはじまりなのか
大きさ、小ささ、にごりのなかから
青い光りはふくらんで

  (これは、子の宿題に手を入れ過ぎたため自作としたもの)
 

竹内敏喜(たけうちとしき)
詩人。1972年京都生まれ。詩集に『翰』(彼方社、1997年)、『風を終える』(同、1999年)、『鏡と舞』(詩学社、2001年)、『燦燦』(水仁舎、2004年)、『十六夜のように』(ミッドナイト・プレス、2005年)、『ジャクリーヌの演奏を聴きながら』(水仁舎、2006年)、『任閑録』(同、2008年)、『SCRIPT』(同、2013年)、『灰の巨神』(同、2014年)​​​​​​​。『魔のとき』(同、2022年)
 
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