八潮れん 欲望は威厳に満ちて  
⁂ 日仏往還 またはパリシンドローム


これは一 でなくてはならない
    瞬
地の果てにのまれ 息たえだえに
美しく醜くのたうつということ
ただそれだけを探しにきたのだ


つねに生み出され 飽くことなく
到来し 旅立ちをそくす
この無関心 無理解な
なま の塊 誠意
  肉
確かに言語だ あるいは勝ち誇った魑魅魍魎 


海を渡ろう 詩節
一服の芝居を演じるのだ そしてこのどうしようもないおのれの 小さを
                                 矮
受け入れるために 示してくれ
決して我がものにならない錯乱を


マドモワゼル・バタフライ・フライ・ど・フレンチ
中ぐらいのあだ 添えて さあ ただ単に生きようじゃないか
       花
なにやらキラキラした薄片が降ってくる
ならばそれらの剣先を迷わず突き刺せ 自分自身のもっとも危険な領域に


共犯者はたとえ数 でもいい しっかりと
        秒
しっかりと捕まえるのだ その執着との交わりこそ
書くことのむき出しの力になる と信じた
それでいい ところがわたしはどこにも行きはしなかった
矢印を追いかけたところで目的地はないのだ 


境は投げだされ動いたが 臆 に歩みを止めて踏みとどまっている
             病
何も模倣できず発見もなく茫然としている
被った皮はなんと硬く厚いのだろう
折り重なるこの層はただの にすぎないが
            皮
意味を持った文字のようにも見えて もどかしく
むやみにかきむしって  炎のごとき傷あとが絶えない 
           陽
なぜか郷愁を掻き立てる 道化の息づかい 
未知の呼びかけ 発汗と失語はまったなし 地団駄さえ踏めない 


八潮れん​​​​​​​
詩を書く人。長野県長野市出身。横浜市在住。2011年アンスティテュ・フランセ東京の詩祭における仏詩翻訳コンクールで優秀賞受賞。2016年第4詩集として自作の日仏対訳詩集「Temps-sable/時砂」を仏人との共著で出版。近年日仏で様々なジャンルのアーティストと朗読パフォーマンスを行なっている。2018年朗読CD発表(仏人との共作)。同年仏ブルターニュでの現代詩フェスティヴァルに招待された。


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