八潮れん 欲望は威厳に満ちて  
ローリングコロナーズ


だいぶ前「ちょっとマイウェイ」という T  V ドラマがあって 中身も
そのタイトルもお気に入りだったな 深刻ぶらずに無理をして 結果
的には楽しみながら乗り越えたと思える生き方はいいな でもちゃん
と無理してきたか? まだ全然楽しみ方が足りない ただし最近はこ
もることに罪悪感がなくなってきていいな 元来出不精だから気が楽
だ それでも自ら外出を控えているとさすがにムズムズしてくる 高
原の草木の匂いやざわめきが懐かしい 海辺の砂浜やエキゾティック
な街角なんかも歩きたいな


ひょんな段階へ 同じく 安易にあぶり出された方角へ、、、、

              反省のない(そう思える)近代的な(そう見える)
ちっぽけな日常と素っ気ない精神を樹脂で固めて
                                         フロンタルスライス/ホリゾンタルスライス!
切って切って切りまくれ 


拭いても拭いてもこの虚ろと充溢
光冠 タンパク質 出発と埋没などなど
しかるべきところにそれらは転がっていて
決して過ぎ去らず わたしたちがそこから過ぎ去ってきて
なのでどこでどのように出会ったとしても文句は言えず
宿借りめ くせものめなどと怒ってみても
やつらはほどほどに均整を保って繁栄してきたようで
それならば殺すか殺されるかあゝと見得を切ってみるが
そのくらいの事ではどうにもならない


                      どこでどう連動するのか詩を書く者は恐ろしい 音も影も
       魅惑な形や驚きの身体を成す者も底が知れず
       これらの大きな謎掛けに挑む器量などあるわけもないので
       ローリングコロナーズで高潮 引潮 大わらわ大やんや

       お仕着せの言葉道具は打っちゃておけ
       ただし我が身を作った現実の諸規則は忘れまい
       生きてある このどうしようもない狡猾獰猛
       ただの1秒でもおのれであることをやめない
       なのにわたしは移りゆく 描写もできない
       想像もできない言語の鍵と鍵穴を拠り所にして


数々の運動は以前のようには流れない 摩耗していく 
底のない その淵を掘っているのだ
事の起こりは寂滅に向かい 同時に光輝へと押し流される
せわしなく行き交う隣人たちとは 幻の素材と脚本を交わす
お互い奇怪なもの同士 苦しみに感謝 麻酔はなしだ



八潮れん​​​​​​​

詩を書く人。長野県長野市出身。横浜市在住。2011年アンスティテュ・フランセ東京の詩祭における仏詩翻訳コンクールで優秀賞受賞。2016年第4詩集として自作の日仏対訳詩集「Temps-sable/時砂」を仏人との共著で出版。近年日仏で様々なジャンルのアーティストと朗読パフォーマンスを行なっている。2018年朗読CD発表(仏人との共作)。同年仏ブルターニュでの現代詩フェスティヴァルに招待された。

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